部下から女性上司へのハラスメント

平成29年1月1日の改正

平成29年1月1日に男女雇用機会均等法および育児介護休業法が改正されました。その中で新たに事業主に「妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについて防止措置を講じることが事業主に義務付け」られました。

厚生労働省のパンフレットに、ん?

防止措置の文例

右の資料は、事業主が講じるべき防止措置の一つの事例として厚生労働省がパンフレットに掲載した文書です。

 

違和感を覚えませんか?

2のハラスメントの具体例①②③を見ていただくと、「部下又は同僚」と文が始まっています。ん?


パンフレットのポイント解説

もう少し詳しく見ようと、ハラスメントのポイント解説がされたパンフレットを見てみました。ハラスメントは種類分けされて解説されていますが、どのポイントを読んでも、「ハラスメントの行為者となり得るのは、上司・同僚です」または「ハラスメントの行為者となり得るのは、上司です」と書かれています。ん?あえて「部下」を外している??


それでは、部下による女性上司へのハラスメントは?

ここでお客様から次の質問が飛んできました。「それでは40歳の女性店長が妊娠した時に、部下達から『この忙しい時期に!』『店長なのに・・もう店長はムリじゃないんですか?』等々の発言を受けた場合、この女性店長はどうなるの?ハラスメントを受けたといえないの?会社は部下を指導したり店長を保護しなくていいの?」との鋭いご指摘です。

 

労働局からの回答は・・・

1回目問い合わせをした際の労働局からの回答は、「上司は人事権があるものだから、ここ(事業主が防止措置を講じるハラスメントの対象)では除いている。人事権もない部下(同僚含む)など弱い立場の人の保護を想定している」といった趣旨の回答でした。

その回答に「法的には、そういうものなのか。。」と安易に納得しかかった私をお客様である経営者さまはご一喝されました。

「私の会社では、そんな女性上司を保護の除外としたような文書は恥ずかしくて掲示できない!」

・・本来は、社労士である私の方が発しなくてはいけない様なこの言葉に、なんて立派な経営者なのだと感動してしまいました。

また、その女性経営者さんは「こんな風にあえて部下と同僚と書くのは男性の発想だ・・・」ともつぶやいていらっしゃいました。妙に説得力のあるつぶやきでした。。

 

後日再度労働局に問い合わせると、今度は、「この同僚という言葉には、部下も含んでいる」との回答でした。前回の回答とだいぶ変わっていますが、今回は調べた上での回答との事でした。(東京労働局でも同様に「同僚に、部下も含んでいる」との回答でした。同じような誤解に基づく質問が何件かあったようです)

それならば、それはそれで安心ですが、であるならば、どうしてこんなに分かりにくい表現にしたのでしょうか。。

私などは、上司・同僚・部下とつい3分類してしまうのですが。。

 

今回の件では、経営者さんのご指摘・発想、そして自社の社風への誇りを大変に感じ、とても感動しました。

そんな経営者の方のサポートができる社労士であることに感謝しました。

そして、自分の至らない点、気づきが足りない点は反省しなくてはいけないなぁと深く反省いたしました。